小池重明の伝記を読んでいたので、かなり期待していたが、実際、期待どおりの作品だった。
雁金準一という「日陰」の存在に焦点を当てているところも面白いし、彼の前半生を「小説」として読み応え十分に描いている。
もちろん、黎明期の近代囲碁界に関する記録としても興味深い。
ただ、キャラを立たせて話を面白くするためか、善人・悪人が露骨に描き分けられている気もする。

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落日の譜: 雁金準一物語 単行本 – 2012/12/1
団 鬼六
(著)
- 本の長さ354ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2012/12/1
- ISBN-104480823743
- ISBN-13978-4480823748
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2012/12/1)
- 発売日 : 2012/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 354ページ
- ISBN-10 : 4480823743
- ISBN-13 : 978-4480823748
- Amazon 売れ筋ランキング: - 636,179位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2021年7月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
雁金準一のことはあまりよく知らず、どんな人かなあと読み進めたら非常に面白く、どんどん読み進めてしまった。
やはりと言うか、特に田村保寿との本因坊継承争いが面白かった。
雁金に運がなかったのは、自分から仕掛けられず後手後手に回ってしまったからか。
田村が継ぐべきだったのか、雁金が継いだ方が良かったのかどうかはわからないが。
まだまだ面白くなりそうなところで未完となってしまったのは残念。
それから、個人的に高田民子夫人については「いつだってこんな人いるよなあ」と思いました(笑)。
やはりと言うか、特に田村保寿との本因坊継承争いが面白かった。
雁金に運がなかったのは、自分から仕掛けられず後手後手に回ってしまったからか。
田村が継ぐべきだったのか、雁金が継いだ方が良かったのかどうかはわからないが。
まだまだ面白くなりそうなところで未完となってしまったのは残念。
それから、個人的に高田民子夫人については「いつだってこんな人いるよなあ」と思いました(笑)。
2018年7月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
囲碁に関する古書が好きです 歴史本や打碁集など集めています この本は歴史に埋もれそうな悲運の碁打ちの物語で 読み終えて棋譜を並べてみたくなりました
2012年12月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
出版社のPR誌は、時にすごく面白い連載をすることがある。うんと古くは岩波書店「図書」の淮 陰生「一月一話」、
中ぐらいの古さでは新潮社「波」連載だった浅田彰「手帖2001」などである。「図書」に連載された、中井久夫「私
の日本語雑記」というのもあった。これらは、浅田彰連載以外は単行本になっている。
「ちくま」に2001年4月号から連載されたこの評伝もそうしたPR誌連載もので、連載時に楽しみに読んでいたが、
月ごとに読むのでは人物関係がわからなくなってしまい、いつか本にまとまるのを楽しみにしていた。しかし、連載
もいつしか終わり、時間がどんどん経っていった。著者も亡くなってしまったので、正直言って評伝の存在を忘れていた。
それがこんなタイミングで出版されて、大変嬉しい。
明治・大正時代の碁打ちの話で、本因坊家といっても明治初年には断絶の瀬戸際まで追い詰められたことなどがわか
り、興味深い。「落日の譜」というタイトルが示す通り、いずれ敗れ去ることがわかっている主人公の物語は、少年
時代・青年時代が伸び伸びしている分だけ一層胸に迫ってくるものがある。物語がいよいよ佳境に入ったところで
絶筆になるところまで計算されているかのようで、余韻を楽しんだ。
中ぐらいの古さでは新潮社「波」連載だった浅田彰「手帖2001」などである。「図書」に連載された、中井久夫「私
の日本語雑記」というのもあった。これらは、浅田彰連載以外は単行本になっている。
「ちくま」に2001年4月号から連載されたこの評伝もそうしたPR誌連載もので、連載時に楽しみに読んでいたが、
月ごとに読むのでは人物関係がわからなくなってしまい、いつか本にまとまるのを楽しみにしていた。しかし、連載
もいつしか終わり、時間がどんどん経っていった。著者も亡くなってしまったので、正直言って評伝の存在を忘れていた。
それがこんなタイミングで出版されて、大変嬉しい。
明治・大正時代の碁打ちの話で、本因坊家といっても明治初年には断絶の瀬戸際まで追い詰められたことなどがわか
り、興味深い。「落日の譜」というタイトルが示す通り、いずれ敗れ去ることがわかっている主人公の物語は、少年
時代・青年時代が伸び伸びしている分だけ一層胸に迫ってくるものがある。物語がいよいよ佳境に入ったところで
絶筆になるところまで計算されているかのようで、余韻を楽しんだ。
2013年1月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
十分楽しめる作品です。出版されてすぐ買いましたが、それは囲碁ファンとして伝説の棋士をもっと
知りたかったことが第一の理由です。身近に雁金準一本人の晩年を知る人がいて、その人となりを聞いていたのですが、
この本によってより具体的な人間像と史的事実を把握することができました。
「本因坊」の名跡を継承出来なかったことによって、囲碁史では雁金準一は敗者と見られますが、
作者は本因坊秀哉となる田村保寿との確執や彼らを取り巻く棋士たちの動きを詳細に描くことによって
棋士の人間としての品格とはどういうものかを示しています。勝負事は勝敗が全て、とは違う次元で
明治、大正、昭和初期までの社会を描いています。
伊藤博文に才能を認められ、庇護を受けながら専門棋士として成長していき、同時代の棋士の
信望を集め、実力的にも棋界の頂点を極める寸前で野に下らざるを得なかった人間の物語として、
作者の死によって未完に終わったものの、ドラマとして読みごたえのある一冊です。
知りたかったことが第一の理由です。身近に雁金準一本人の晩年を知る人がいて、その人となりを聞いていたのですが、
この本によってより具体的な人間像と史的事実を把握することができました。
「本因坊」の名跡を継承出来なかったことによって、囲碁史では雁金準一は敗者と見られますが、
作者は本因坊秀哉となる田村保寿との確執や彼らを取り巻く棋士たちの動きを詳細に描くことによって
棋士の人間としての品格とはどういうものかを示しています。勝負事は勝敗が全て、とは違う次元で
明治、大正、昭和初期までの社会を描いています。
伊藤博文に才能を認められ、庇護を受けながら専門棋士として成長していき、同時代の棋士の
信望を集め、実力的にも棋界の頂点を極める寸前で野に下らざるを得なかった人間の物語として、
作者の死によって未完に終わったものの、ドラマとして読みごたえのある一冊です。
2020年11月10日に日本でレビュー済み
これは明治から昭和にかけて活躍した囲碁棋士・雁金準一の物語である。
『死神の棋譜』(奥泉光・将棋)→『風果つる街』(夢枕獏・将棋)→『真剣師 小池重明』(団鬼六・将棋)→『落日の譜』(団鬼六・囲碁)と連想ゲームのように読み継いできた。
囲碁は学生時代にちょっとかじった。
碁会所にも少し出入りして、4級くらいだと言われたことがあった。
が、まあ、石の並べ方を知っている程度である。
それでも、この小説は面白かった。
雁金準一に焦点を当てつつも、明治以降の囲碁の歴史全体が描かれているのである。
我々もよく知っている「本因坊」というタイトルだが、昭和11年に実力本因坊戦が始まるまでは世襲だったということを、本書で初めて知った。
江戸時代に4つの家が囲碁の家元として認定され、段位を発行する権限を持っていた。
茶道や華道と同様の制度だったのである。
明治に入ってから、以後の家元制度が崩壊し始め、その中で新しい試みが様々に繰り広げられる。
うまく立ち回った棋士もいれば、不器用というほかにない棋士もいた。
実力は最強であり、人柄も好かれたにもかかわらず、囲碁界の再編の中で不器用に、頑なに生きたのが雁金準一であった。
少年のころから晩年まで、伊藤博文をはじめとする政財界の重鎮から指導碁を乞われ続けたが、本因坊の後継者争いではしり込みをして、最も後継者に近い位置にいながら逃してしまう。
その歯がゆさが、団鬼六の筆にかかると、読んでいて歯噛みするほどなのである。
こういうシーンを描かせると、SM小説で鍛えた団鬼六の筆致は冴えわたる。
この小説は、いろいろな曲折の末、昭和初期に日本棋院が創設されたところで絶筆となってしまったのだが、それでも、大して興味なかった囲碁界の歴史と雁金の生涯を、飽きることなく読ませてくれたのは団鬼六という稀有な能力があってこそだったと感じる。
『死神の棋譜』(奥泉光・将棋)→『風果つる街』(夢枕獏・将棋)→『真剣師 小池重明』(団鬼六・将棋)→『落日の譜』(団鬼六・囲碁)と連想ゲームのように読み継いできた。
囲碁は学生時代にちょっとかじった。
碁会所にも少し出入りして、4級くらいだと言われたことがあった。
が、まあ、石の並べ方を知っている程度である。
それでも、この小説は面白かった。
雁金準一に焦点を当てつつも、明治以降の囲碁の歴史全体が描かれているのである。
我々もよく知っている「本因坊」というタイトルだが、昭和11年に実力本因坊戦が始まるまでは世襲だったということを、本書で初めて知った。
江戸時代に4つの家が囲碁の家元として認定され、段位を発行する権限を持っていた。
茶道や華道と同様の制度だったのである。
明治に入ってから、以後の家元制度が崩壊し始め、その中で新しい試みが様々に繰り広げられる。
うまく立ち回った棋士もいれば、不器用というほかにない棋士もいた。
実力は最強であり、人柄も好かれたにもかかわらず、囲碁界の再編の中で不器用に、頑なに生きたのが雁金準一であった。
少年のころから晩年まで、伊藤博文をはじめとする政財界の重鎮から指導碁を乞われ続けたが、本因坊の後継者争いではしり込みをして、最も後継者に近い位置にいながら逃してしまう。
その歯がゆさが、団鬼六の筆にかかると、読んでいて歯噛みするほどなのである。
こういうシーンを描かせると、SM小説で鍛えた団鬼六の筆致は冴えわたる。
この小説は、いろいろな曲折の末、昭和初期に日本棋院が創設されたところで絶筆となってしまったのだが、それでも、大して興味なかった囲碁界の歴史と雁金の生涯を、飽きることなく読ませてくれたのは団鬼六という稀有な能力があってこそだったと感じる。