面白い作品は構想が良いとかキャラが面白いとか表現が新しいとかテーマが新鮮とかいろいろある。テーマが新鮮という点でこの作品は特筆できるのだろう。日本の伝統的な芸能や技術をテーマにすることはちはやぶるのような傑作を生んでいる。ただ、和算となると数学が苦手な人も相当いるだけに思い切ったテーマだと思う。
渋川春海は史実どおり碁打ちの家の嫡子であり碁打ちとしての実績も歴史に残る。その一方で改暦に貢献した事跡は一部では有名だったがなかなかマニアックな知識というべきだろう。その青春を描くというのは数学の天才というものが江戸時代に身を立てる手段がどのようなものだったかを示している。和算の天才と言えば教科書にあるとおり関孝和だがその職業は札差であり社会に数学の需要が幅広く存在したことを示している。それは学というよりは芸に近いものだが、それが職業として成立するだけの文化と文明がある。
少なくとも江戸時代の数学需要の幅広さは現代とさほどの違いは無く、碁には現在のゲームプログラムと同様のアルゴリズム類似のものがあり、商業には利益から先物の分析、暦には天体観測と幾何学の研究と基本的なものが整っていた。特に特異なのは数学を和算として教養として成立していたことでほとんど日本だけの現象らしい。
作中では神社に算額を奉納したり絵馬に出題するなど、今で言えばクイズ番組かコミケで趣味の本を売るようなことが当たり前になっていた。実際、東京どころか地方でも算額は多数残っておりそれも色鮮やかな岩絵の具で大型のものが堂々と飾られていたりする。
なかなか馴染みのない和算の世界だけに背景を理解するだけでも十分な説明が必要になる。それが可能なのは原作で十分な情報の整理ができていたからだろう。それを絵にしたのはこの作品の描き手の技量だがうまくこなせていると思う。

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天地明察(1) (アフタヌーンKC) コミック – 2011/9/23
小説はもとよりゲーム、アニメ、漫画原作などマルチに活躍する異才、冲方丁 (うぶかたとう)の初の時代小説にして、本屋大賞・吉川英治文学新人賞など 数々の賞を受賞したベストセラーを完全漫画化! 江戸時代初期、日本独自の 暦を製作した渋川春海の山あり谷あり、囲碁あり算術あり天文ありの人生を実 力派絵師・槇えびしが爽快に描く! 2012年秋、映画全国ロードショー!
幕府の碁打ち、渋川春海(二代目安井算哲)は、碁の名門四家の一員でありながら真剣勝負の許されないお城碁の現状に飽きており、趣味の算術や天文観測に没頭する始末。そんな時、算術絵馬が多数奉納されているという神社に出かけた春海は、全ての問題を一瞥のみで解いていった若い武士の存在に衝撃を受ける。その武士の名は「関」。春海の退屈な日常はこの日を境に大きく変わることになる……!
幕府の碁打ち、渋川春海(二代目安井算哲)は、碁の名門四家の一員でありながら真剣勝負の許されないお城碁の現状に飽きており、趣味の算術や天文観測に没頭する始末。そんな時、算術絵馬が多数奉納されているという神社に出かけた春海は、全ての問題を一瞥のみで解いていった若い武士の存在に衝撃を受ける。その武士の名は「関」。春海の退屈な日常はこの日を境に大きく変わることになる……!
- 本の長さ212ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2011/9/23
- 寸法13 x 1.5 x 18.3 cm
- ISBN-104063107787
- ISBN-13978-4063107784
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商品の説明
著者について
槇 えびし
挿画、短編漫画などを経て、現在は漫画連載を主に活動。端麗風雅な絵柄で人気上昇中。主な連載作品は『天地明察』(原作 冲方丁) 『朱黒の仁』など。
冲方 丁
1977年2月14日生まれ。1996年、『黒い季節』(角川書店)でデビュー。その後『マルドゥック・スクランブル』(日本SF大賞受賞)『シュピーゲル』シリーズ『シュヴァリエ』『蒼穹のファフナー』『ヒロイックエイジ』『カルドセプト』など、全メディアの枠を軽々と越え、創作の場を拡大する「文芸革命児」!!! 『天地明察』は初の時代小説。
挿画、短編漫画などを経て、現在は漫画連載を主に活動。端麗風雅な絵柄で人気上昇中。主な連載作品は『天地明察』(原作 冲方丁) 『朱黒の仁』など。
冲方 丁
1977年2月14日生まれ。1996年、『黒い季節』(角川書店)でデビュー。その後『マルドゥック・スクランブル』(日本SF大賞受賞)『シュピーゲル』シリーズ『シュヴァリエ』『蒼穹のファフナー』『ヒロイックエイジ』『カルドセプト』など、全メディアの枠を軽々と越え、創作の場を拡大する「文芸革命児」!!! 『天地明察』は初の時代小説。
著者について
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1977年岐阜県生まれ。早稲田大学在学中の1996年に『黒い季節』で第1回スニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。2003年、第24回日本SF大賞 を受賞した『マルドゥック・スクランブル』などの作品を経て、2009年、天文暦学者・渋川春海の生涯を描いた初の時代小説『天地明察』で第31回吉川英 治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞し、第143回直木賞の候補となる(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『マルドゥック・スクランブル』(ISBN-10:4152091533)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2019年9月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2017年10月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
小説版が星5つレベルで大好きだったこともあり、漫画版も購入してみました。 個人的には、面白く読み進めることができたのですが、頭の中で想像していた渋川春海を中心とした個性豊かなキャラクターと、物語と時代背景が持つ世界観の広がりが、漫画版では、どうしても漫画のキャラクターイメージに固定されてしまったことで、逆に世界感が狭まってしまう印象となりました。読む順序が逆で、漫画版から小説を読んだのならば、また評価は180度違った気もします。ただ、全巻購入してますので面白かったことには違いありませんよ。
2020年5月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
珍しい題材に引かれて何となく読んだものの、
描かれる世界にあっという間に引きずり込まれてしまった。読了後の高揚感をどう表現すれば良いのかわからない、自分の語彙の乏しさが悲しくなる。
おそらく私と同じ気持ちになった方は多くおられるはず。とにかく面白い。引きずり込まれまっせ。アカンやつです、コレ。
描かれる世界にあっという間に引きずり込まれてしまった。読了後の高揚感をどう表現すれば良いのかわからない、自分の語彙の乏しさが悲しくなる。
おそらく私と同じ気持ちになった方は多くおられるはず。とにかく面白い。引きずり込まれまっせ。アカンやつです、コレ。
2019年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
近頃小説版『光圀伝』を読み、本書の主人公が劇中に登場しました。『天地明察』は未読で、近いうちに読もうと思っていたところコミックス版の存在を知りました。どちらを先に読むべきか悩み、コミックス版を先に手を付けました。
かつて『皇国の守護者』もまた漫画から着手し、その面白さに惹かれ原作小説を読みました。本作品はそれを彷彿とさせ、これほど面白いコミックスならば原作小説も面白いに違いないと思わせます。
そしてまた、どちらを先に読むべきかと悩み、コミックスは1巻で中断しています。
かつて『皇国の守護者』もまた漫画から着手し、その面白さに惹かれ原作小説を読みました。本作品はそれを彷彿とさせ、これほど面白いコミックスならば原作小説も面白いに違いないと思わせます。
そしてまた、どちらを先に読むべきかと悩み、コミックスは1巻で中断しています。
2016年2月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
原作未読です。
コミックを無料で2巻までよめていて、ずっと気になっていましたが最近まとめ買いしてしまいました。
最初の方だけ面白い、みたいなことは全く無いですラストまでずっと楽しめます。
本当に面白かった。
内容に関しては他の方のレビューを読んでもらうとして。
それ以外であえて言うとすれば、巻末のあとがきですね!
原作者の冲方さんと 槇さんそれぞれの視点で必ずあとがきがされています。
そこで冲方さん自身が槇さんのコミカライズを気に入っている様子が毎巻末うかがえます。
きっと原作もすばらしいものなんだろうなと感じつつ、
原作読者にもおすすめできる作品になっているんじゃないでしょうか。
コミックを無料で2巻までよめていて、ずっと気になっていましたが最近まとめ買いしてしまいました。
最初の方だけ面白い、みたいなことは全く無いですラストまでずっと楽しめます。
本当に面白かった。
内容に関しては他の方のレビューを読んでもらうとして。
それ以外であえて言うとすれば、巻末のあとがきですね!
原作者の冲方さんと 槇さんそれぞれの視点で必ずあとがきがされています。
そこで冲方さん自身が槇さんのコミカライズを気に入っている様子が毎巻末うかがえます。
きっと原作もすばらしいものなんだろうなと感じつつ、
原作読者にもおすすめできる作品になっているんじゃないでしょうか。
2012年4月19日に日本でレビュー済み
原作は未読だが、こちらの方から読み始めてしまったので
ストーリーがある程度先に進むまで、小説の方は手に取れない。
「こんなお侍、ありえないだろう」というキャラクター設定ながら
ある程度の時代設定はきちんと押さえているため
江戸時代の理系人たちのイノセンスさが良く出ている、と思う。
原作者のみならず、マンガ家の方もきっちりと
時代背景や和算の内容も押さえられており
今後のタッグも楽しみの作品である。
ストーリーがある程度先に進むまで、小説の方は手に取れない。
「こんなお侍、ありえないだろう」というキャラクター設定ながら
ある程度の時代設定はきちんと押さえているため
江戸時代の理系人たちのイノセンスさが良く出ている、と思う。
原作者のみならず、マンガ家の方もきっちりと
時代背景や和算の内容も押さえられており
今後のタッグも楽しみの作品である。
2017年5月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この先どんな展開になるのかわからんけど、文句のつけようがない始まり方だと思う。